鍵のない夢を見る

中に収められた5作ともよく書かれているし、「石蕗南地区の防火」と「君本家の誘拐」は面白かったけれど、全体的に楽しくなれない。

いつもタイトルにこだわるのだけど、「鍵のない夢を見る」の意味が分からない。「鍵『が』ない夢を見る」ならまだ分かる。鍵をなくした夢の中で困ってるのかなあ、とか思う。しかし、「鍵『の』ない夢を見る」っていったいどういうことなのだろう。言葉どおりに解釈すれば、夢というものには本来鍵が備わっているはずなのに、私は鍵のついてない夢を見ている、ということになりそうだ。もちろん夢というものに鍵などついてはいない。だから、意味が分からなくなる。

それでも無理やりこじつければそれなりの意味を与えることは可能だけど、今度はそんなことしないといけないタイトルをつける意味が分からなくなる。

やっぱり、「鍵『が』ない夢を見る」という意味で「鍵『の』ない夢を見る」というタイトルをつけただけなのかもしれない。