★★★☆☆
天外(てんげ)の家では家長作右衛門が長男市朗に屋敷田畑を相続させる約束で市朗の妻すえの体を玩んでいた。作右衛門とすえの間に生まれた奇子は作右衛門の末子として可愛がられていた。そこに作右衛門の次男仁朗が復員する。仁朗は米軍の捕虜になりスパイになっていた。米軍の上司に命令され、活動家江野を米軍に引き渡し、その後江野の死体を線路に置く。仁朗の妹の志子(なおこ)は江野の恋人だった。死体は江野本人ではなく身代わりだったが、江野も死んでいた。死体の血がついたシャツを洗うところを奇子と子守りのお涼に見られた仁朗は、二人を始末しようとする。お涼は殺されたが、奇子は天外の親族会議で死んだことにされ、土蔵の地下に閉じ込められる。仁朗は行方不明となる。奇子は仁朗の弟伺朗を好きになり、二人は肉体関係を結ぶ。作右衛門が脳卒中で倒れ、奇子が十五になった日に作右衛門の遺言書が開かれる。奇子の母であるすえ(市朗の妻)に財産の8割を相続させるとの内容だった。すえは奇子と一緒に天外の家を出る決心をするが、市朗がすえを殺して野壺に埋める。奇子に定期的に高額のお金が送ってくるようになり、作右衛門の妻が奇子のために貯金をする。送り主は祐天寺富夫という名前のヤクザだった。道路拡張のために土蔵が壊された機会に奇子は現金書留を頼りに祐天寺のところに向かう。祐天寺が実は仁朗だと疑う下田(げた)の息子波奈夫は奇子を好きになり、仁朗は二人を別荘に住まわせ、世間を知らない奇子をまともな人間にしようとする。仁朗が襲撃され重傷を負う。轢死を装った昔の事件に関わる人物が死んでいることから、米軍の関与を疑う。自分の右腕の金城(この人物も以前米軍のスパイだった)が仕組んだことが分かり、仁朗は金城を殺す。海外逃亡する前に江野の墓に行った仁朗は志子に会う。志子は仁朗を刺すが、医者の山崎を呼びに行くと、そこに市朗と伺朗がおり、仁朗のところに向かう途中に奇子と波奈夫にも会う。洞窟の中で伺朗は、お涼を殺したのが仁朗、すえを殺したのが市朗だと詰め寄る。波奈夫はみなに奇子に謝るよう迫るが、仁朗が奇子を盾にとり洞窟を出ようとしたため、伺朗はダイナマイトを爆発させ洞窟をふさぐ。二週間が過ぎた頃、偶然にも発見されるが、奇子以外はほぼ死んでいた。その後奇子は村を出ていき、消息が絶えた。
三十年以上も前に読んだ本を図書館で見つけたらいま読んでも面白かった。残念ながら「アドルフに告ぐ」は見つからない。