『マザーズオークション★★★☆☆
無職の男26歳は、自分や実家のこざこざしたモノをネットオークションに出品してなんとか暮らしている。真面目に働こうとしないので母親とはすぐにケンカになる。ある日、母親が1円でネットオークションに出品されていて、2円で入札すると、だんだん入札額が上がっていく。負けないように少しずつ入札額を上げていくと3万円まで上がる。友人から連絡がきて、3万円で入札している人物が会いたがっていると言う。会ってみると小学生の男の子で、男がうちの母親は3万円の価値はないと言うとじゃあ僕がもらいますと言う。男が母親のパート先のスーパーを訪れると、店長は母親の話をしてくれた。いつも息子の話ばかりしているという。入札期限の5日後まで男はバイトをしてお金を貯め、入札期限に115,246,円でなんとか落札する。男はこれを契機に真面目に就職活動に励むが、男の友人、小学生の男の子、店長、男の父親などが喫茶店に集まっている。オークションで入札していた彼らはそのためのアカウントを順番に削除して、男の母親に電話をかけると、母親はみんなに感謝し、落札額は115,246(いい子にしろ)だと笑う。
プー太郎の息子を更生させるために母親らが一計を講じたというオチは安っぽいが、母親に憎まれ口を叩いてばかりの息子が母親を他人に取られないように一生懸命な姿はグッときた。
『遺体は一体…』★★☆☆☆
殺人現場に桜庭刑事がくる。そこには後輩の刑事と新米刑事がいて、2階の寝室のベッドに男女の遺体がある。庭で凶器を見つけた桜庭が寝室に戻ると女の遺体がなくなっている。後輩刑事と新米刑事を問い詰めるが、二人は何のことですかと不振な顔をする。凶器を見つけた場所に戻れば凶器もなくなっていて、寝室に戻れば男の遺体もない。二人の刑事に詰め寄れば、後輩刑事が説明を始める。桜庭は自分が担当した殺人事件の捜査が進まない中で精神に異常をきたし、退職して今は施設にいると言う。なんとか納得した桜庭をタクシーに乗せた後輩刑事が部屋に戻ると遺体があった。上層部の指示で隠蔽工作をしたのだった。後輩刑事が新米刑事の口封じのため拳銃を向けたとき、桜庭が再び現れる。地下収納にあったウォーターサーバーがキッチンカウンターに置かれていたことから、二人の刑事が地下収納に遺体を隠したのに気づいたのだ。殺人事件の解決と警察の隠蔽工作のニュースが流れるテレビを施設で見ていた桜庭は、表彰くらいしてもらってもいいんじゃないかと呟くが、施設職員は桜庭がまた妄想していると呆れる。桜庭に電話がかかってくる。また厄介な事件が起こった、桜庭動けるか?と。
事件を自分が解決したと桜庭が妄想してるのか、周りはそう思っているが本当に桜庭が秘密裏に解決しているのか、どっちか分からないのが難点。
『実家じまい』★★☆☆☆
紗耶は仕事中母からの電話に出なかった。母はくも膜下出血で瀕死のところ団地の友人に発見されたが亡くなった。紗耶は子供の頃から母親に束縛され、高校生のときにできたボーイフレンドも母親から拒絶された。紗耶は海外留学の夢も諦めた。母が住んでいた団地の実家じまいを始めた。会社の同僚二人が手伝い、家財道具や衣料品をネットオークションに出品すると全部売れて部屋は片付いた。ところが翌日紗耶が部屋に行くと全て元どおりになっている。半狂乱になった紗耶が部屋の中をめちゃめちゃにすると、数人の老人の写真と人骨が見つかった。ネットで調べると同じ団地で孤独死した老人たちだと分かる。紗耶が団地の住人たちに(それは全て老人なのだが)尋ねて回ると、一人の老女が写真の中の一枚は自分の夫だと告げる。数年前、夫が事業が失敗して自分に暴力を振るうことを紗耶の母親に話すと、紗耶の母親は自分の部屋の鍵を渡し、いつでも逃げてきていいと諭した。そしてその老女から老女の部屋の鍵をもらった。その後、老女が自宅で暴力を振るわれているところに紗耶の母親が助けに入り、老女の夫は階段から転落死したことになった。団地で老人たちに囲まれた紗耶は老人たちがオークションに出品したバッグや衣類を身につけていることに気づく。老人たちは紗耶の母親の部屋に入り、母親の写真を拝んでいる。紗耶の母親は団地に独居する老人たちの部屋の鍵を持ち、老人たちを安楽死させていたのだ。人生の最後に安らかに「しまい」をしてくれる紗耶の母親は老人らにとって教祖であった。その教祖の部屋をしまおうとする紗耶に詰め寄る老人たちから逃れるように紗耶は押入れに入ると、老人たちは押入れを封鎖して紗耶を閉じ込める。そこに母親の声がして、紗耶を解放するよう指示すると、老人たちは部屋を出ていく。紗耶の会社で無断欠勤が一週間続く紗耶が心配されているころ、紗耶の母親の部屋の押入れには紗耶と母親が入っており、逃げ出そうとする紗耶を母親は許さなかった。
ホラーである。夜見たら怖かっただろうと思う(昼間に録画を見た)。
『おじさんになりたい』★★★☆☆
縫川家の小春ちゃんは小学二年の女の子。妹の小夏ちゃんは幼稚園生。小春ちゃんの将来の夢はおじさんになること。ゴミ捨て場で拾った「おじさん」を持っている。「おじさん」の背中のファスナーを開けて中に入るとおじさんにしか見えない。背中のファスナーはいつも小夏ちゃんに閉めてもらう。小春ちゃんのお父さんは怒りっぽくてお母さんを殴ることもある。ある夜、お母さんが書いた履歴書を見つけたお父さんは、家のことをちゃんとやれと叱りつける。もしものことがあったとき子どもたちを育てられるか不安でとお母さんが応じると、もしものことって何だと逆上して殴る。次の日、小春ちゃんは「おじさん」になり、小春ちゃんのクラスの副担と偽ってお父さんを待ち伏せする。「おじさん」がお父さんに離婚を勧めると、家庭のことを学校に告げ口したと思ったお父さんは家に帰ってお母さんを問い詰める。「おじさん」の背中のファスナーが噛んでしまったので、小春ちゃんは「おじさん」のままお父さんを突き飛ばしてお母さんを助ける。「おじさん」がお母さんを抱擁すると、お母さんは「おじさん」に怯える。お父さんは包丁を持って「おじさん」を家から追い出す。「おじさん」は公園の掃除員にファスナーを壊して開けてもらい、事情を話すと清掃員は小春ちゃんが小春ちゃんとしてきちんとお父さんに話すのがいいと言う。頷いた小春ちゃんは壊れたファスナーのフックをポケットに入れる。夜、小春ちゃんが家に帰るとお父さんとお母さんは小春ちゃんの無事を泣いて喜ぶ。小春ちゃんは久しぶりにお父さんと二人でベッドで寝る。背中を向けたお父さんに小春ちゃんが話しかける。なぜお父さんはお母さんを怒るの。お父さんは自分が仕事で家にいないからお母さんに頑張って欲しかった、でもこれからはなるべく怒らないようにすると約束する。「じゃ、やめないんだ」と呟きながら小春ちゃんはお父さんの背中にファスナーのフックを差し込む。翌朝、子ども部屋に「お父さん」がいて、小夏ちゃんに背中のファスナーを閉めるよう頼む。「お父さん」は台所に行き朝ごはんを作っているお母さんを後ろから抱きしめる。お母さんは突然のことに驚きながらも嬉しさを隠せない。小夏ちゃんがダイニングに降りてきて親子三人の朝食が穏やかに始まる。小春ちゃんがいつも座っていた場所は空いたままだ。
ベッドで小春ちゃんがきちんとお父さんにお話をしてお父さんが反省し優しいおとうさんになりましたメデタシメデタシかと思ったら、最後にひとひねりあってあざやか、なんだけれども、「お父さん」に入った小春ちゃんが小夏ちゃんにファスナーを閉めるよう頼むとき、ファスナーを閉めることを渋る小夏ちゃんを実際のお父さんみたいに怒って命じたのはなぜなんだろう。「お父さん」になった小春ちゃんもお父さんみたいに怒りっぽくなるかと思えばそうじゃなかった。そして、家族で和やかに朝食を摂るとき小春ちゃんが不在なのを誰も不審に思わなかったこと。小春ちゃんは「お父さん」の中にいるから自分がいないことは分かっている。小夏ちゃんは「お父さん」のファスナーを閉めたから「お父さん」の中に小春ちゃんがいることは知っている。つまり問題はお母さん。お母さんはなぜ小春ちゃんがいないのを不審に思わないのか、それが分からない。「お父さん」の中に小春ちゃんがいることを知ってるってことか。そこ以外は全体的にうまくまとまっているし、「おじさん」や「お父さん」の背中から入りこむアイデアがハマっていて楽しい。