novel

高瀬庄左衛門御留書

★★★★⭐ 面白い。若い頃、時代小説はいっさい読んだことがなかったが、歳をとるにつれ読むことが増え、どれも面白いと感じる。たまたま面白い時代小説を選んでいるだけだと思うが、歳のせいも少しあるかもしれない。 本作では『罪と罠』の章がハイライトだろう…

オーガ(ニ)ズム

★★★⭐⭐ 文庫で上下2巻の分量ではあるものの、読み終わるのにずいぶん時間がかかった。たぶん7か月以上。その間に近しい人が二人亡くなった。 面白くはあったのだが、読んでてすぐに眠くなった。酒を呑みながら読んでいたからだけではないだろう。たぶん何か…

82年生まれ、キム・ジヨン

★★★⭐⭐ ジヨンの気持ちはよくわかる。男には分からない、と言われそうだけど、そしてたしかに全部を分るはずなどないけれど、それでも分かる。分かるから、この小説は面白い。この小説は、分からせる小説なのだ。そういう意味では、文学ではなくて、たんなる…

地図と拳

★★★⭐⭐ 面白いのだが、ページを繰る手がなかなか進まなかった。 同じ作者の「君のクイズ」に比べれば、話が長いし、重いし、込み入ってるしで、大作といってもいいのだけど、短くて軽くて簡潔な「君のクイズ」のほうを評価してしまう。

加速してゆく

★★⭐⭐⭐ 「11文字の檻」の一編目。 JR福知山線脱線事故が出てくる。事故としての重さが小説に使われることを許さない気がする。ミステリーとして必要な要素でもない。なのになんでと思って巻末の「著者による各話解説」を読めば、元々は9人の作家が平成に起き…

一人称単数

★★★⭐⭐ 村上春樹の短編集。文庫で出たので買った。30年前は新刊が出るのが待ち遠しかったというのに、今は新刊を買わず、文庫が出るまで待っている。 いまになって思えば、村上春樹の長編は、ギリギリ「ねじまき鳥クロニクル」まで読めば、あとは読まなくたっ…

ふりさけ見れば

★★★★★ 安部龍太郎の日経新聞連載小説が567回をもって完結した。 日本の天皇や中国の皇帝のほか、歴史に疎い私でも知っている阿倍仲麻呂、吉備真備、楊貴妃、王維などが登場する。どこまでが史実に忠実でどこからがフィクションなのかは分からないが、たいへ…

君のクイズ

★★★★⭐ 出だしがいい。クイズ番組で問題文が読まれる前に回答ボタンを押すという、ゼロ秒押しで王者が決まる。この小説は、敗者となった主人公が、ゼロ秒押しがヤラセだったのかそうでなかったのかを推理する話である。 読者は、ゼロ秒押しにはなんらかの合理…

ピエタとトランジ

★⭐⭐⭐⭐ 殺人事件を誘発する体質の探偵が主人公という、その設定のあまりにもバカらしさを芥川賞作家がどういう小説にしたのかと思って読んでみたが、正直よく分からない作品だった。ミステリーっぽくはあるが、謎解きに驚きはなく、単に頭がいいから犯人が分…

自転しながら公転する

★★★⭐⭐ 文庫の解説にもあったように、この小説にプロローグとエピローグが必要だったのかという問題。作者(山本文緒)の考えを想像すれば、それがなくて本編だけだったらただの恋愛小説に見えてしまうのが嫌だったのかもしれない。もちろん山本文緒の小説は、…

永遠と横道世之介

★★★⭐⭐ 毎日新聞に掲載していた吉田修一の連載小説が20日に終わった。 極論すれば、いい人たちのいい話である。甘っちょろいと言ってしまえばそれまでだが、たまにはそういう話もいい。そういう話をただ甘っちょろいだけにせず、読む者の心を暖かくさせるには…

月の満ち欠け

★★☆☆☆ 書店で文庫が多めに並べられていた。たぶんテレビドラマか映画になったのだろう。以前読んだはずが、いつものごとくすっかり内容を忘れていたので読み直すことにした。 結局、生まれ変わりの話だった。 三角哲彦でなく小山内が主人公なのは、最後のオ…

恋愛中毒

★★★★☆ 恋愛というのは、人を好きになるということではなく、人に好かれたいということなんだなあ。

井上ひさしベスト・エッセイ

★★★☆☆ 面白いエッセイと面白くないエッセイが載っている。 「わたしはわたしをまだ許さない」は心を撃つ。

夜空に泳ぐチョコレートグラミー

★★★☆☆ 甘ったるいだけの恋愛小説かと思ったら、ミステリーっぽい仕掛けがあったりして、ちょっと驚く。

嫉妬/事件

★★☆☆☆ 文庫カバーの一番目立つところに大きく「ノーベル文学賞受賞」とある。作品のタイトルより大きく。帯ではなくカバーに。 アニー・エルノーという作家を知らないので、ノーベル文学賞受賞者と知らされなければ、もちろんこの本を読まなかったはずである…

魔王の島

★☆☆☆☆ 帯に書かれた「2019年度コニャックミステリー大賞受賞作」という惹句に騙されてつい買ってしまった。コニャックミステリー大賞がどれほどのもんか知らないけれど、つい。 というのは夢でした、というのも夢でした、で、それもやっぱり夢でした、という…

黄色い家

★★★☆☆ 川上未映子が読売新聞で連載していた小説が終わった。川上未映子の初期の作品(乳と卵とか)は好きだが、以降はあまり面白いと思わない。外国で賞を獲ったりして評価は高いようだけど。

つまをめとらば

★★★★☆ 今村翔吾のときにも思ったことだが、作品は面白い。面白いけれど、同じ作者の別の作品を読もうという気にならない。その理由がうまく言葉にできない。面白かったけど、これを読まずに死んだとしても後悔はしないな、という気がするだけである。 ただ、…

蒼ざめた馬を見よ

★★★★☆ 実家の本棚で見つけた。ずいぶん昔に読んで、五木寛之ってなんて面白いんだ、と興奮したことを覚えている。 文庫のページは黄ばみ、なにより最近の文庫に比べると文字が小さい。一行43字で1ページが17行である。ちなみに先日読んだ「ノースライト」は…

ノースライト

★★☆☆☆ 書店で本を手に取ったとき中身を読まないでも、これは面白そうだとか、逆に面白くなさそうだとか、感じる。それは当たりのときもあれぱ外れのときもあるけれど、当たりのほうが多い。 「ノースライト」を手に取ったとき、面白そうだとは感じなかった。…

白鶴亮翅

★★☆☆☆ 先日、多和田葉子の新聞連載小説が終わった。ドイツに暮らす女性の語りは多和田本人の身辺雑記のようで、まるで小説っぽくないなと思っていたが、それに慣れてしまったのか話が進むにつれてやっぱり小説なんだなと分かってはきた。 でも、小説で書かれ…

流浪の月

★★★☆☆ 更紗の恋人の亮くんのクズっぷりがこの小説を分かりやすく(かつ面白く)しているけれど、もしも亮くんを善人にして、それでも更紗が文に惹かれる話だったら、別の面白さになっていたろうと思う。 でも、作者が書きたいのは「文学」ではなく「小説」なの…

はるか、ブレーメン

★★☆☆☆(星ふたつ) 先日終了した重松清の新聞連載小説。 読みやすく、悪くはないし、読んだ時間返せとも思わないけれど、読んでよかったとも思えない作品だった。

マリアビートル

★★☆☆☆(星ふたつ) 終盤、木村ジジババが動き出してから一気に面白くなるものの、最後に花火が上がるような爽快感もなく、伊坂幸太郎への期待が大きい分評価は厳しめになってしまった。 おそらく王子への嫌悪感が昇華されないまま物語が終わるので、それ以外の…

夏物語

★★★☆☆ 帯に惹かれて買った。 米TIME誌ベスト10 米ニューヨーク・タイムズ必読100冊 米図書館協会ベストフィクション おまけに村上春樹のコメントまで帯には載ってる。 う~ん、わからない(~_~) みんなが、いやみんなではないけど、アメリカに偏っているけど…

掃除婦のための手引き書

短編集というよりは、短編の寄せ集めである。仮に、飛行機や新幹線に乗っている間の暇潰しに買った雑誌に、この作者の短編が一作載っていたなら、面白く読めただろう。けれど、そんな雑誌を何十冊も抱えて飛行機に乗るのがバカらしいのと一緒で、ときどき少…

2019ザ・ベストミステリーズ

「東京駅発6時00分のぞみ1号博多行き」(大倉崇裕)と「くぎ」(佐藤究)の二作品が面白かった。 競馬で例えると、この2作品が写真判定で、3着以降は3馬身以上離された団子状態といったところ。

火喰鳥 羽州ぼろ鳶組

作風はベタだが、とても面白い。例えば、ラーメンズの小林賢太郎が好きだけど、たまに志村けん見たら面白かった、みたいな面白がり方である。 ちなみに私は志村けんのコントは面白いと思わない。どころか、生理的に嫌いである。志村けんは素のほうがいいと思…

小説の惑星 ノーザンブルーベリー編

順位をつけるとすれば、 1位 工夫の減さん(町田康) 2位 杜子春(芥川龍之介) 3位 休憩時間(井伏鱒二) 4位 賭けの天才(眉村卓) 5位 ヘルメット・オブ・アイアン (一條次郎) なお、「先導獣の話」(古井由吉)は、1ページ目で読むのを諦めた。代表作の「き…