ホテルローヤル

ホテルローヤルにまつわる7つの短編が現在から過去に向けて、つまり時系列とは逆に並べられている。

ちなみに、5番目の『せんせぇ』にはホテルローヤルは出てこない。女子高生と教師が二人して釧路に向かうエンディングが、唯一、釧路にあるホテルローヤルを連想させるだけだ。まあ、それはそれはそれとしても、『せんせぇ』自体は悪くない作品だ。

と思っていたら、ずいぶん経ってからやっと気づいた。二人は、3番目の『えっち屋』に、雅代の記憶の中で、「セーラー服とスーツ」として登場していた。しかも、ホテルローヤルが廃業せざるを得なくなったある事件の登場人物として。

そのことに気づく人はすぐに気づいたろうと思う。しかし、私は気づくのに相当時間がかかった。あやうく気づかないまま、このブログを書いてしまうところだった。

解説を書く人はたいへんだ。自分が気づかなかった部分をまちがって解説に書いてしまうと、一生恥ずかしい思いから逃れられない。「俺が解説書いたあの文庫、絶版になってくれ」と願うのだろうなあ。