マンチェスター・バイ・ザ・シー

★★★⭐⭐

地味だけどいい映画だ。

泣かせる映画だったら嫌だと思って観はじめたが、そうでなくてよかった。

粗筋は、兄を亡くした弟が兄の遺言で甥(兄の子)の後見人に指名され困惑する。兄はマンチェスターに住み、弟はボストンで便利屋をやっていた。甥は自分の父の死を何とも思わない様子で、友だちと遊んだり二股のガールフレンドとセックスすることに躍起だった。唯一、父親をしばらく冷凍保存することに抵抗するくらい。弟はボストンで甥と一緒に暮らすつもりが、甥はマンチェスターに住み続けたい。

少しずつ弟の過去が明らかになる。酔って暖炉に火をつけたあとコンビニにビールを買いに行っている間に自宅が火事になり、子ども三人が死ぬ。妻は去っていった。

兄の葬式に自分の元妻と兄の元妻がやってくる。それぞれに今の夫がついてくる。

兄の元妻の家に甥を連れていくが、あとで甥に今の夫から冷たいメールが届く。

弟は甥がガールフレンドと楽しむ時間を与えるために街に出て、偶然元妻と会う。元妻は、火事のことで夫を責めた過去を泣いて詫びる。弟は宥めるのに疲れ逃げるようにその場を去る。飲み屋に行って、ささいなことでケンカをする。

弟は兄弟の共通の友だちに会ったあと、甥に話し始める。甥がマンチェスターで暮らせるように友だちの養子にしたことを。甥は自分と一緒にこの家に住めばいいと訴える。弟は「越えられないんだ」と話す。火事で子どもを亡くしたこと、そのせいで妻が離れていったこと、再婚をして新しく子どもを産んだ元妻に今更謝られたこと、それらを越えることができないまま、それらの起こったこのマンチェスターに住むことはできないのだろう。

きっと次のようなストーリーだと思っていた。嫌々後見人になって、その後ぶつかり合って、でも最後は理解しあって一緒に住むことになる。いい話なんだろうと。でも、ちょっと違った。そこがよかった。