ブラック・チェンバー・ミュージック

ジャンルでいえば、ミステリーになるのか、でも殺人犯を見つけるわけでもないので、ハードボイルドとかサスペンスとかになるのか、それと恋愛小説の要素もあるし、カテゴリーをはっきりさせるのは難しい。

でも、面白い。今年読んだ小説の中では断トツに面白い。今年読んだ小説といっても10冊か20冊しかないけど。

最近読んだ「手紙」と「ホワイトラビット」と比べる。「手紙」は東野圭吾作品の中では評価が高いうちの一つ、らしい。だけど、読んでると早く最後のオチにたどり着きたくて、途中経過をじっくり楽しもうという気にならない。しかも、最後のオチも、読者を感動させるために無理やりそういった展開に持っていったんじゃないかと思えるほどに、話に合理性がない。この作品もミステリーに分類されるのか分かりづらいのだが、だいたいのミステリー作品はそういう傾向にあると思う。

次に「ホワイトラビット」。伊坂幸太郎作品の中では平均点以上にはなる、と思う。視点や時間がくるくる変わるので飽きない。どこかに伏線が張られているかもしれないし、登場人物のセリフが洒落ているので、読み飛ばさないで読むことに苛立たない。逆に、オチが見えてくると、なんだかガッカリしてしまいそうになるが、手品のタネを知ったらガッカリするのと同じだろう。

ということで、「手紙」と「ホワイトラビット」を貶したような書き方をしたが、両作品とも十分に面白かったのである。ただ、「ブラック・チェンバー・ミュージック」はそれらと比較できないほどの傑作なのである。