プラナリア

山本文緒が昨年10月に亡くなったことを知り、文春文庫を買った。

ジャンルで言えば恋愛小説なのだろうけれど、恋愛が主題ではない。性愛小説?でもない。「生きていくこと」への不安がテーマのようだ。これが、「生きていること」への不安がテーマだと重くて読む気にならないが、そうじゃないので良かった。

短編が五つ載っている。どれも面白いが、「どこかでないここ」と「あいあるあした」が特によい。「あいあるあした」の最後なんか、娘をもつ父親としては主人公といっしょに泣きたいほどだ。「泣ける小説」は嫌いだが、本作はそういった小説とも違う。

と、ここまでベタ褒めしたが、山本文緒の他の作品を読むかと訊かれれば、あと一冊くらいは読むかな、というのが答えになる。面白いけれど、別に読まなくてもいいという気がする。