残月記

新聞とか雑誌の書評で激賞されていたので買ったのだが、あとで思い起こしてみると、それらはみな大森望が書いていた気がする。大森望という人がどんな人なのか知らないが(たぶん文芸評論家なのだろう)、作者の小田雅久仁という人も全く知らないので、あとで文庫にならないかもしれないから新刊本買っておこうと思った次第である。

SFだった。ファンタジーノベル(読んだことはないが)寄りのSFだった。

最初はSFだということが分からず、途中でSFだと分かる。分かった瞬間にガッカリしました。なんだSFだったのかあ、という感じです。でも、文章力がしっかりしているので、読ませられました。特に「そして月がふりかえる」は、不条理の中でもがく主人公がだんだん好きになってしまいます。ただ、ラストはあれはいかんでしょう。いかにもオチっぽいオチですが、あえてオチっぽくない終わらせ方、例えば、だんだん新しい人生に記憶が上書きされて以前の記憶を完全に失ってしまう瞬間で終わらせるとかの方が余韻が残ったと思います。

ほかの二編はファンタジーっぽい部分が好きではありません。