オーガ(ニ)ズム

★★★⭐⭐

文庫で上下2巻の分量ではあるものの、読み終わるのにずいぶん時間がかかった。たぶん7か月以上。その間に近しい人が二人亡くなった。

面白くはあったのだが、読んでてすぐに眠くなった。酒を呑みながら読んでいたからだけではないだろう。たぶん何かが足りないか、何かが余計だったのだと思う。

『ブラック・チェンバー・ミュージック』と比べてみよう。『オーガ(ニ)ズム』は登場人物の魅力が足りない。今風に言うとキャラが薄い(という言い方でいいのかあまり自信はない)。『ブラック~』の登場人物はキャラが立っていた(言い方まちがってないですよね)。

オーガニズム』は仕掛けが多すぎた。アヤメメソッドは現実的でないし、携帯型核爆弾は結局フェイクだし、阿部和重の妻川上がいつ登場するかと思っていたら最後まで出てこないし、ほかにも多くの思わせぶりな事柄や登場人物が「思わせ」の範疇を超えず意味があったのか疑問だ。

それでも『オーガ(ニ)ズム』は面白い。そもそも阿部和重はもっと評価されていいし、もっと売れていい作家だ(私が知らないだけで、十分評価されてたくさん売れているのかもしれないけど)。でも、あの傑作(と私が思っているだけかもしれないけど)『ブラック~』ですら、新刊発売時に某新聞の隅っこに地味に広告が出ていただけで、書店でお目にかかったことはない(店内を探して回ったわけではないけど)。『ブラック~』は映画にしたらヒットすると確信している。なんなら私が監督兼プロデューサーで作りたいくらいだ。(言わずもがなだが、そんな才能もカネも私にはない)

結局、『ブラック~』の記事になった。でも、『オーガ(ニ)ズム』も面白いんだよ。