一人称単数

★★★⭐⭐

村上春樹の短編集。文庫で出たので買った。30年前は新刊が出るのが待ち遠しかったというのに、今は新刊を買わず、文庫が出るまで待っている。

いまになって思えば、村上春樹の長編は、ギリギリ「ねじまき鳥クロニクル」まで読めば、あとは読まなくたっていい作品だった。そう、「1Q84」だって読まなければならない作品ではなかった。いまになって思えばだけど。

ちなみに、「羊をめぐる冒険」と「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」は大傑作。初めて読んだ村上作品が「羊」だったけれど、なんというか自分の中の小説観がひっくり返るほどの衝撃でした。小説ってこういうものだという認識は、たとえば森鴎外だったり芥川龍之介だったり太宰治だったり、そこらへんにあったのだけど、「羊」を読んだとき、え~、こんな小説があっても許されるんだ、と驚いたものです。それから、村上作品は出ればすぐ買うという感じでしたが、「羊」と「世界」を越える作品は出なかった。

で、今回の短編集ですが、村上春樹の短編はまだまだ面白いという印象です。長編が結構前から面白くなくなったのに対し、短編はまだまだイケます。収録された一つひとつの作品について感想を書くのが面倒になったのでこれで終わりますが、またいつか面白い長編を書いてくれたらうれしいなと思います。