ふりさけ見れば

★★★★★ 安部龍太郎の日経新聞連載小説が567回をもって完結した。 日本の天皇や中国の皇帝のほか、歴史に疎い私でも知っている阿倍仲麻呂、吉備真備、楊貴妃、王維などが登場する。どこまでが史実に忠実でどこからがフィクションなのかは分からないが、たいへ…

君のクイズ

★★★★⭐ 出だしがいい。クイズ番組で問題文が読まれる前に回答ボタンを押すという、ゼロ秒押しで王者が決まる。この小説は、敗者となった主人公が、ゼロ秒押しがヤラセだったのかそうでなかったのかを推理する話である。 読者は、ゼロ秒押しにはなんらかの合理…

ピエタとトランジ

★⭐⭐⭐⭐ 殺人事件を誘発する体質の探偵が主人公という、その設定のあまりにもバカらしさを芥川賞作家がどういう小説にしたのかと思って読んでみたが、正直よく分からない作品だった。ミステリーっぽくはあるが、謎解きに驚きはなく、単に頭がいいから犯人が分…

ウクライナ侵攻

きのうでまる1年。 ロシアでのプーチンの支持率が81%だという。ロシア国民が真実を知らされていないのか、知っているからこそなのか。 かつて日本では、国民は大本営発表を信じ、戦争に勝てると思っていた。正義は日本にあると確信してもいた。いまのロシア…

松本零士氏死去

85歳。急性心不全。 テレビの宇宙戦艦ヤマトは毎週心が躍った。劇場版銀河鉄道999は3回観た。入れ替え制がなかった時代なので連続で。ほとんど知られていないがワダチは傑作だった。実家に置いていたワダチのコミックをお袋が親戚の子にあげて今は残ってな…

辻村寿三郎氏死去

89歳。 辻村ジュサブロー名で知られる「新八犬伝」をワクワクしながら見てた、という微かな記憶。 合掌。

マンチェスター・バイ・ザ・シー

★★★⭐⭐ 地味だけどいい映画だ。 泣かせる映画だったら嫌だと思って観はじめたが、そうでなくてよかった。 粗筋は、兄を亡くした弟が兄の遺言で甥(兄の子)の後見人に指名され困惑する。兄はマンチェスターに住み、弟はボストンで便利屋をやっていた。甥は自分…

反省すべきものは反省しなければならない

国会での「子ども手当」論争で、岸田首相が「反省すべきものは反省しなければならない」と答弁した。これは、「反省すべきものは反省すべき」とか「反省しなければならないものは反省しなければならない」と言ってるのと同じで、なにを言ってるんだと思う。…

鮎川誠死去

1月29日。74歳。 やはり自分の歳との近さに驚く。鮎川誠と自分は10歳以上歳が離れてるけど、たとえば10代にとっての10歳差は、気持ち的には60代にとっての10歳差の何倍もある。

自転しながら公転する

★★★⭐⭐ 文庫の解説にもあったように、この小説にプロローグとエピローグが必要だったのかという問題。作者(山本文緒)の考えを想像すれば、それがなくて本編だけだったらただの恋愛小説に見えてしまうのが嫌だったのかもしれない。もちろん山本文緒の小説は、…

永遠と横道世之介

★★★⭐⭐ 毎日新聞に掲載していた吉田修一の連載小説が20日に終わった。 極論すれば、いい人たちのいい話である。甘っちょろいと言ってしまえばそれまでだが、たまにはそういう話もいい。そういう話をただ甘っちょろいだけにせず、読む者の心を暖かくさせるには…

高橋幸宏死去

1月11日、高橋幸宏が亡くなった。70歳だった。 伝えるニュースの中で知ったことがある。あの「ライディーン」は高橋幸宏が作曲したということ。メディアによっては、ユキヒロが鼻歌で歌ったメロディーを坂本龍一がメモったという話もある。 YMOとしての作曲…

吾 ナンバーファイブ

★★★☆☆ 十数年振りに読みかえす。 話を大きくしすぎないでいれば傑作になったかもしれない。けど、松本大洋がこういう話を描きたかったのだったら仕方ない。

月の満ち欠け

★★☆☆☆ 書店で文庫が多めに並べられていた。たぶんテレビドラマか映画になったのだろう。以前読んだはずが、いつものごとくすっかり内容を忘れていたので読み直すことにした。 結局、生まれ変わりの話だった。 三角哲彦でなく小山内が主人公なのは、最後のオ…

恋愛中毒

★★★★☆ 恋愛というのは、人を好きになるということではなく、人に好かれたいということなんだなあ。

井上ひさしベスト・エッセイ

★★★☆☆ 面白いエッセイと面白くないエッセイが載っている。 「わたしはわたしをまだ許さない」は心を撃つ。

夜空に泳ぐチョコレートグラミー

★★★☆☆ 甘ったるいだけの恋愛小説かと思ったら、ミステリーっぽい仕掛けがあったりして、ちょっと驚く。

ほえる犬は噛まない

★★☆☆☆ ボン=ジュノの初長編監督作品。 主人公であるらしいユンジュが犬を殺したとき、あれ、主人公じゃなくて敵役だったかと思えたり、でもそのあと、鬱屈した男の再生のストーリーになっていくのかと思わせたり、でもやっぱりワイロを使って教授になったり…

世にも不思議な物語´22秋の特別編

TV

元カレと三角関係 ★★★☆☆ コンシェルジュ ★☆☆☆☆ わが様 ★★★★☆ ちょっと待った! ★★☆☆☆

嫉妬/事件

★★☆☆☆ 文庫カバーの一番目立つところに大きく「ノーベル文学賞受賞」とある。作品のタイトルより大きく。帯ではなくカバーに。 アニー・エルノーという作家を知らないので、ノーベル文学賞受賞者と知らされなければ、もちろんこの本を読まなかったはずである…

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

★☆☆☆☆ やり直したいところから一日をやり直すという話はありきたりすぎて、やり直した一日が元の世界とは少し違うという設定で独自色を出そうとしたのかもしれないが、それが何の効果もないばかりか、話が分かりづらくなっているだけ。 主人公のなずなの声が…

魔王の島

★☆☆☆☆ 帯に書かれた「2019年度コニャックミステリー大賞受賞作」という惹句に騙されてつい買ってしまった。コニャックミステリー大賞がどれほどのもんか知らないけれど、つい。 というのは夢でした、というのも夢でした、で、それもやっぱり夢でした、という…

黄色い家

★★★☆☆ 川上未映子が読売新聞で連載していた小説が終わった。川上未映子の初期の作品(乳と卵とか)は好きだが、以降はあまり面白いと思わない。外国で賞を獲ったりして評価は高いようだけど。

つまをめとらば

★★★★☆ 今村翔吾のときにも思ったことだが、作品は面白い。面白いけれど、同じ作者の別の作品を読もうという気にならない。その理由がうまく言葉にできない。面白かったけど、これを読まずに死んだとしても後悔はしないな、という気がするだけである。 ただ、…

ぐりとぐら

絵の担当山脇百合子さんが失くなった。子どもたちに何度も読んであげた傑作絵本。 合掌。

あなたのブツが、ここに

TV

★★★★☆ キャストがとてもよかった。仁村紗和(亜子)のミネケンのあしらい、津田健次郎(武田)の厳しさと優しさ、佐野昌哉(ミネケン)の底抜けの明るさとたまに見せる真面目な顔、岡部たかし(葛西)の飄々とした軽さ。亜子の元夫役の平埜生成のクズっプリもなかな…

蒼ざめた馬を見よ

★★★★☆ 実家の本棚で見つけた。ずいぶん昔に読んで、五木寛之ってなんて面白いんだ、と興奮したことを覚えている。 文庫のページは黄ばみ、なにより最近の文庫に比べると文字が小さい。一行43字で1ページが17行である。ちなみに先日読んだ「ノースライト」は…

村上宗隆

昨日、ヤクルトの村上が55号本塁打を打ち、王貞治の記録に並んだ。 ちなみに歴代記録は 1位60本 バレンティン(ヤクルト)2013年 2位55本 王貞治(巨人)1964年 ローズ(近鉄)2001年 カブレラ(西武)2002年 村上宗隆(ヤクルト)2022年 6位54本 バース(阪神)1982年…

ノースライト

★★☆☆☆ 書店で本を手に取ったとき中身を読まないでも、これは面白そうだとか、逆に面白くなさそうだとか、感じる。それは当たりのときもあれぱ外れのときもあるけれど、当たりのほうが多い。 「ノースライト」を手に取ったとき、面白そうだとは感じなかった。…

ゴルバチョフ氏死去

8月30日。91歳。 ゴルバチョフ氏がソ連の書記長になり、ペレストロイカとグラスノスチを始めたとき、そんなまさか、あのソ連がそんなことするわけない、なんか企んでるんじゃないかと疑心暗鬼になったことを覚えている。国内では不人気だったらしいが、偉大…